カテゴリ:不動産お役立ちコラム / 更新日付:2024/12/24 13:35 / 投稿日付:2024/12/24 13:35
都市のスポンジ化とは?
「都市のスポンジ化」とは、人口減少によって活用されない空間(空き家や空き地、使われなくなった建物など)が増え、都市があちこちで“穴”のように空いてスカスカになってしまう現象です。
都市の外観は一見変わらないのに、中をよく見ると所々に空白ができている――そうしたイメージから、「穴あきチーズ」に例えられることもあります。
国土交通省は、この現象を次のように定義しています。
- 都市の大きさは変わらない
- 人口が減少している
- 都市内に使われない空間が小さな穴のように発生
- 結果として、都市全体の密度が下がる
一見、小さな問題に見えるかもしれませんが、スカスカになった都市ではサービス産業の生産性低下や行政サービスの非効率化が進み、さらにまちの魅力やコミュニティの活力まで失われる恐れがあります。
スポンジ化が進む実態:最新データが示す問題の深刻さ
2024年12月23日に国土交通省が公表した「令和5年法人土地・建物基本調査 速報」によると、2023年1月1日現在で約53.2万件もの低・未利用地(駐車場、資材置場、利用できない建物や空き地の合計)が存在していました。これは、法人が所有する宅地等(建物敷地・建物敷地以外)全体のおよそ2割にあたります。
このうち約7割は過去5年間で状態が変化しておらず、今後も使われる予定がない土地が多いのが現状です。
法人所有の低・未利用地
法人による低・未利用地は、周辺環境を悪化させる要因にもなりえます。使われずに放置されることで、雑草やゴミが増えるなど、景観上の問題が生じやすくなります。また、所有者と利用希望者のマッチングが進まないと、地域の経済活動の停滞も懸念されます。
個人所有の空き家
一方、個人の住宅に目を向けると、野村総合研究所「2040年の住宅市場と課題」の試算では一戸建の空き家が急増し、2043年には2023年の2.6倍になると見込まれています。
こうした使われない空間の増加は、住環境の悪化だけでなく、安全面や景観面でも課題となります。
スポンジ化対策の二つの柱:防ぐ・埋める
それでは、この「都市のスポンジ化」を抑えるために、どのような対策があるのでしょうか。
大きく分けると次の二つのアプローチが考えられます。
1. 「穴を防ぐ」対策:立地誘導促進施設協定(コモンズ協定)
空き地や空き家を新たに増やさないようにする対策が「穴を防ぐ」アプローチです。
その一つが「コモンズ協定」と呼ばれる仕組みで、住民や法人が共同で施設を管理・運用するための協定を結び、コミュニティの核となる場を作り出します。
- 例:空き家を改装して地域住民が気軽に集まれるスペースにする
- 例:子どもの遊び場や高齢者向けのサロンをつくる
法人が土地を所有している割合は全体の4割ほどあり、法人が主体的に協定を推進する取り組みも期待されています。行政からの支援や税制上の優遇措置もあるため、地域住民が主体的に空き家・空き地の増加を食い止める有効手段といえます。
2. 「穴を埋める」対策:低・未利用土地・空き家の有効活用
既にできてしまった空き地・空き家を「埋める」ためには、税制面のインセンティブが挙げられます。
- 税制面のインセンティブ
- 「低未利用土地の適切な利用・管理を促進するための特例措置」では、都市計画区域内にある低利用の土地を個人が譲渡した場合、譲渡所得から最大100万円を控除できます。
- 「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」は、相続によって空き家になった物件を売却する際、一定の要件を満たせば最大3,000万円が控除されます。老人ホーム等への入居で空き家になったケースも対象が広がり、この制度が空き家の流通・利活用を促進することが期待されています。
不動産関係者としての視点:課題とチャンス
「都市のスポンジ化」が進むと、不動産価値の低下を招きかねず、不動産業界にとって見過ごせない問題となります。実際、法人土地所有割合は減少傾向にあり、今後はさらに空き家・空き地が増える可能性があります。
しかし同時に、そこには新たなビジネスチャンスも潜んでいます。たとえば、
- コモンズ協定を活用した地域活性化プロジェクトを企画・運営する
- 放置されている空き家・空き地の価値を見極め、新たな住宅や店舗、コミュニティ施設として再生する
- 税制上の優遇措置を所有者にアドバイスし、売却や利活用の仲介を行う
など、不動産事業者だからこそ担える役割は多岐にわたります。自治体や地元住民と連携することで、都市のスポンジ化を食い止めるだけでなく、地域全体の活性化にもつながるでしょう。
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監修者情報
- 趣味は、筋トレとマラソン。忙しくても週5回以上走り、週4回ジムに通うのが健康の秘訣。