カテゴリ:不動産お役立ちコラム / 更新日付:2024/10/17 10:52 / 投稿日付:2024/10/17 10:52
街づくりはもっと面白くなる!タクティカル・アーバニズム
「事件は会議室で起こっているんじゃない、現場で起こっているんだ!」
人気ドラマのセリフですが、実は「まちづくり」にも通じるものがあります。
従来の都市計画は、行政主導で長期的な視点で進められることが多く、時代の変化への対応が遅れてしまうことも。まるで、大企業が壮大な長期ビジョンを掲げる一方で、現場のスピード感に追いつけず、硬直化していく様子と重なります。
そこで、近年注目されているのが「タクティカル・アーバニズム」という考え方です。
なぜ今、タクティカル・アーバニズムが必要なのか?
大企業でよくあることですが、全社レベルの目標と、現場で働く社員が日々向き合っている課題との間には、しばしば大きな溝が存在します。
例えば、「世界中の人々に革新的なサービスを提供する」という壮大なミッションを掲げる企業があるとします。しかし、実際に顧客と接し、日々の業務を行う営業部の社員にとっては、「今月の売上目標を達成するにはどうすれば良いか」という現実的な課題の方が重要です。
街づくりにおいても同様のことが言えます。行政が描く大きな目標も重要ですが、実際に地域に住み、活動している人々にとっては、もっと身近で具体的な課題が存在します。
例えば、
- 公園が少なく、子どもたちが安全に遊べる場所がない
- 商店街に活気がなく、シャッターが目立つようになってきた
- 地域のコミュニティが希薄で、隣に住んでいる人の顔も知らない
といった課題です。
行政主導の都市計画は、こうした地域住民のリアルなニーズに、必ずしもスピーディーに対応できるとは限りません。そこで、注目されるのが、現場レベルの課題解決にフォーカスした「タクティカル・アーバニズム」です。
タクティカル・アーバニズム:地域の声をカタチにする、スピーディーな街づくり
タクティカル・アーバニズムは、短期的、低コスト、小規模なアクションを通して、都市の長期的な変化を目指す手法です。市民、行政、専門家など、様々な主体が連携し、実験と検証を繰り返しながら、都市の課題解決や価値向上に取り組みます。
従来型の都市計画のように、時間をかけて大規模なインフラ整備を行うのではなく、「今すぐできること」から始め、地域住民の声を反映させながら、街を少しずつ、しかし確実に、より良い方向へと変えていくことを目指します。
具体的な例としては、
- 空き地や駐車場を、期間限定で公園や広場として開放する「ポップアップパーク」
- 道路の一部を歩行者天国にして、イベントやマルシェを開催する「パークレット」
- 地域住民が自由に絵を描いたり、植物を植えたりできる「DIYストリート」
などが挙げられます。
これらの取り組みは、比較的低コストで短期間で試験的に実施できるため、行政手続きや予算獲得に時間がかかる従来型の都市計画と比べて、圧倒的にスピーディーな対応が可能です。
タクティカル・アーバニズムがもたらすもの
タクティカル・アーバニズムは、以下のようなメリットをもたらすと考えられています。
- 変化への柔軟な対応: 小さな取り組みを積み重ねることで、時代の変化や地域住民のニーズに合わせて、柔軟に対応できます。
- 市民参加の促進: 市民や事業者が主体的に街づくりに参加することで、地域への愛着や誇りを育むことができます。
- 地域の魅力の向上: 地域の個性を活かした魅力的な空間が生まれ、街の価値を高めることに繋がります。
地域の力を結集する、中間支援組織の役割
しかし、タクティカル・アーバニズムを成功させるためには、地域住民や事業者だけで取り組むのではなく、行政や専門家など、様々な立場の人々との連携が不可欠です。特に、地域まちづくりを行う団体や、そういった活動をサポートする中間支援組織の役割は重要です。
名古屋市は、「地域まちづくり推進要綱」に基づき、まちづくり組織と行政との継続的な関係構築を目的とした「登録認定制度」を運用しています。この制度を通じて、地域と行政が共にまちの将来像を実現していくために、まちづくりの団体を継続的にサポートする「パートナーシップ支援」 を行っています。
彼らは、地域の実情に精通し、行政とのパイプ役も担うことができるため、タクティカル・アーバニズムを推進する上で、中心的な役割を果たすことが期待されます。
まとめ:タクティカル・アーバニズムで、街づくりはもっと面白くなる!
タクティカル・アーバニズムは、従来型の都市計画では難しかった、スピード感と柔軟性を兼ね備えた、新しい街づくりのアプローチです。
地域住民の声を直接反映させ、地域の魅力を最大限に引き出すタクティカル・アーバニズムは、これからの時代における街づくりの重要なキーワードとなるでしょう。
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こぼれ話
タクティカル・アーバニズムと現代社会を生き抜くための思考法
タクティカル・アーバニズムは、単なる都市計画の手法ではなく、変化の激しい現代社会を生き抜くための、より普遍的な思考法を示唆していると言えるでしょう。
それは、「小さく始め、行動しながら考える」「変化を恐れず、柔軟に対応する」「周りの人と協力し、集合知を活用する」という3つのポイントに集約されます。
そして、興味深いことに、これらの要素は、ソフトウェア開発におけるアジャイル開発、起業におけるリーンスタートアップ、そしてキャリア論におけるプランドハプンスタンス理論(計画的偶発性理論)など、2000年代以降、様々な分野で注目されている「タクティカル」な手法と共通しています。
「計画」と「柔軟性」:コーゼーションとエフェクチュエーション
これらの「タクティカル」な手法の背景には、「エフェクチュエーション」という考え方があります。
エフェクチュエーションとは、明確な目標を最初に設定するのではなく、「今、手元にあるもの」を最大限に活用し、行動しながら目標を達成していくという考え方です。
一方、従来からビジネスや組織運営で重視されてきたのが、「コーゼーション」という考え方です。コーゼーションは、目標を定め、綿密な計画に基づいて、必要な資源を投入していくというアプローチです。
特徴 | コーゼーション | エフェクチュエーション |
---|---|---|
目標 | 最初に明確な目標を設定 | 行動しながら目標を明確化 |
計画 | 綿密な計画に基づいて行動 | 状況に合わせて柔軟に変更 |
資源 | 目標達成に必要な資源を調達 | 手持ちの資源を最大限に活用 |
考え方 | 目標から手段を逆算 | 手段から目標を創造 |
適した状況 | 大きな構想が必要な時、安定した環境 | 将来予測が困難で、不確実性の高い環境 |
従来型の都市計画は、まさにコーゼーション的なアプローチと言えます。しかし、変化の激しい現代においては、このような計画重視のやり方では、対応が難しい場面も出てきました。
そこで、注目されているのが、エフェクチュエーションの考え方を取り入れた「タクティカル」な手法です。
様々な分野におけるタクティカルな手法
分野 | タクティカルな手法 | 特徴 |
---|---|---|
都市計画 | タクティカル・アーバニズム | 住民の声を反映させながら、小規模な変更を積み重ねて、街の空間を段階的に改善していく。従来型の都市計画よりも、迅速かつ柔軟な対応が可能。 |
ソフトウェア開発 | アジャイル開発 | 小さな単位で開発とテストを繰り返しながら、柔軟にソフトウェアを開発する。利用者からのフィードバックを迅速に取り入れ、改善を続ける。 |
起業 | リーンスタートアップ | 最小限の機能を備えた製品やサービスをいち早く市場に投入し、顧客からのフィードバックを基に改善を繰り返す。徹底的な市場調査よりも、顧客との対話を重視する。 |
キャリア | プランドハプンスタンス理論 | 将来のキャリアを厳密に計画するのではなく、目の前の出来事に対して積極的に行動し、予期せぬ機会をキャリアに活かす。変化を恐れず、柔軟に対応することで、新たな可能性を広げる。 |
変化の激しい現代において、重要なのは、コーゼーションとエフェクチュエーションのどちらか一方を選択することではなく、状況に応じて両者を使い分けることと言えるでしょう。
【参考サイト】
変化が激しい時代の必修科目?起業家的アプローチ「エフェクチュエーション」に学ぶ | 株式会社リクルート
ビジネスイノベーションを加速させる エフェクチュエーションとは② エフェクチュエーションとコーゼーション | CLOVER Light
公共空間で遊ぼう! タクティカル・アーバニズムの事例から学ぶ、ほしいパブリックスペースのつくり方 | greenz.jp グリーンズ
タクティカル・アーバニズムで進める「自治体×SDGs」|新・公民連携最前線|PPPまちづくり
地域まちづくりアドバイザー派遣|名古屋都市センター
名古屋市:地域まちづくりの推進(暮らしの情報)
監修者情報
- 趣味は、筋トレとマラソン。忙しくても週5回以上走り、週4回ジムに通うのが健康の秘訣。